第1話 更なる進化
2020.10.23 UP

「バイクライダーのための腕時計を作りたい」との想いで2018年にスタートしたMOTO-Rですが、立ち上げ以来本当にたくさんのバイク業界の方々のご縁や温かい声援を頂きながら、この2年間活動を続けてくることが出来ました。

バイクの伝道師の異名をもつ、ミュージシャンの末飛登さんとの出会い、
そしてMFJ全日本ライダーの渡辺一馬選手や、世界のダートトラッカー大森雅俊選手など、レースの第一線で活躍される一流プロライダーの活動サポート、新しいことだらけの2年間でしたが、活動を通して、選手やファンの皆様からたくさんのことを学ばせて頂きました。

昨年は、全日本ロードレースの全会場にてKENTEXの特設ブースを構えてPRもしてきましたので、観戦にいらしたレースファンの方々の中にも、私達の「MOTO-R」を目にされた方がいらっしゃるのではないかと思います。

MOTO-R SP

そして応援してくださる皆様に背中を押される思いで、2020年1月には、MOTO-Rを主軸に展開する当社の直営店として、東京秋葉原に「KENTEX BASE」をオープンするに至りました。
基地のような店内には、バイクパーツを展開図のように壁一面にディスプレイしたり、ツールキャビネットを改造して時計のショーケースとしたり、お客様には「ここは時計屋さんなの?」と良く言われるほどのこだわりのお店が出来上がりました(笑)

MOTO-R SP

大変ありがたいことに、「バイク乗りの時計があるって聞いたから見に来たよ」とか、「自分はハーレー乗りだから、オレンジ色が出たら買うよ」など、実際に多くのライダーさんにお越し頂き、徐々にバイクライダーさんとの交流を持つ場にもなっていきました。

お店でお客様と話していると、私はバイク乗りの方は本当に血の通った温かい方達ばかりだと感じます。自分のバイクを乗り物としてだけでなく「相棒」のように大切に考えていたり、ジャンルは違えどバイクに乗っているというだけで繋がりあえる懐の深さもバイクならではだと思います。

実は、私はこのMOTO-Rを開発した時点では二輪の免許を持っていなかったのですが、お店を構え、そしてお客様との交流を通じて、バイクそのものの魅力だけでなく、「バイク乗り」という“人”そのものの魅力にも惹かれるようになり、昨年に二輪免許を取得、今年にはバイクも購入し、遅咲きながらバイク人としても第一歩を歩み始めました。

私はこれまで、時計屋としての視点だけで腕時計を考えてきましたが、バイクの世界に足を踏みいれ、そして多くのライダーさんからのリアルなフィードバックに様々なことを学ばせていただきました。初代MOTO-Rは、逆位置リューズや耐震設計などライダーユースに特化した実用性が評価され、多くのライダーさんにご愛用頂いてきたのですが、同時に様々なフィードバックも届くようになりました。
その中でも最も多かったのが、「もっとカスタムできたらいい」という声でした。

そして、バイクライダーの言わんとするカスタムには2つの意味があることを知りました。

一つは、バイクは買って終わりではなく、マフラーをチタンに替えたり、フェンダーをカーボンに替えたり、ボルトをアルマイトに替えたり、デザインや自分のライディングスタイルを追求しながら購入した後で“育てていくもの”であるという事です。
時計業界の常識は、一つの完成品時計を販売したら、後はメンテナンスで数年に一度だけ分解洗浄を行うというもので、買ってからがスタートだという発想がなく、育てること=改造はご法度で、保証の対象外となるという考え方が普通でした。

そして二つ目は、アフターサービスの点です。バイクの場合、細部に至るパーツまで、個別に購入が出来るため、破損や故障があっても、そのパーツを購入することでピンポイントで修理が可能です。これにより無駄なコストを抑えながら必要なメンテナンスをすることが出来るため、末永く使うことが出来るようになり、結果的にこれが製品への愛着や、製品を大切にする“バイク人”ならではの心にも繋がっていくのだと思います。
一方時計の場合は、一部のパーツは交換が可能ですが、ひとたびケースやベルトに傷が付いたり破損してしまえば、丸ごと交換という方法で、費用は数万円~10万円以上かかることも少なくありません。世間では、時計はお金がかかると思っていらっしゃる方も多いと思いますが、私はこういったアフターサービスの部分での壁がそのようなイメージを生み出している一つの原因だとも思うようになりました。

初代MOTO-Rでもネジやベルトをカスタムできる設計になっていますが、ボディ全体もセパレータブル(分解可能)な構造として、各パーツを自分で自由にカスタムできたらどれほど楽しいだろう、 素材もステンレスだけでなく、チタン、アルミ、カーボンなどでカスタムが出来れば、デザインや色を自分のバイクに合わせられるし、時計の重さも自分好みに調整できるかもしれない、 アフター面でも傷んだパーツだけ交換すれば良いので、無駄な費用を抑えながら長く綺麗に時計を使っていけるはず。

そんな構想を悶々と考えながら、昨年からイメージを形にしていく作業に着手したのですが、私が当初紙に書き起こした設計コンセプトがこちらです。

MOTO-R SP

ケース本体を分割可能なバラバラのパーツで構成して、ネジでそれを組み立てることが出来るというものです。そして、個々のパーツを異素材や異なる表面処理の色で作ることで、それぞれを自由にカスタムすることが出来るというコンセプトでした。
これをもとに、バイクと同じように、“手にしてから育てていくMOTO-R”の設計検討が進められていきました。

今年は予想もしていなかった新型コロナウィルスの大流行により、当社も先にご紹介したKENTEX BASEの営業自粛を余儀なくされたり、全日本ロードレース選手権がしばらく中止になってしまったり、様々な交流の場が途絶えてしまい非常に辛い思いでしたが、その逆境で与えられた時間だからこそ、私はラボにこもり、ひたすらこの設計開発に明け暮れる日々をこの数か月過ごしてきました。

そしてついにこの9月に設計が完了し、現在プロトタイプの製作段階へ入っているのですが、このモデルは、MOTO-Rから更なる進化を遂げた、「 MOTO-R SP 」として、製品化を目指していきます。

次回の第2話では、最終的に出来上がった「セパレータブルケース構造」の全貌と、デザインなどをご紹介していきますので、ぜひお楽しみに!!